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から始めよう
 Written By 箭本進一


 最近、ジャンプが面白くないねえ
 オタク者が2人以上集まると、9割以上の高確率で聞ける台詞です。
 大抵はこの後、我々が年を取っただけだいや、確かにつまらない他にもこんなつまらない漫画があるぞなどのジャンプ談義、漫画談義に花が咲く訳なのですが、そんな貴方に朗報です。未開拓の、広大な広がりを持つコミック世界が、貴方のすぐそこに存在します。
 その名はアメコミ。アメリカンコミックです。

 何だか頼みもしないのにちょいちょいやって来て、謎の裏ビデオやアバンギャルドな金儲けやちょっと名前を聞かない薬品を売りつけようとする、ダイレクトEメール(SPAM)みたいな書き出しになってしまいましたが、本コラムの主旨はアメリカンコミックを読むと楽しいという事です。
 さて、最近注目されているアメリカンコミック、略してアメコミの世界なのですが、何処から読めばいいのか分からないので恐い男性キャラの顔が恐い女性キャラの顔恐い筋肉が恐いキャラが多すぎて恐いなどの理由から敬遠される事もあります。
 そこで、本コラムでは、日本人のアメコミ世界エントリーに最適な場所としてX−MENをお勧めします。
 X−MENには以下に挙げるような、日本人が好きな要素が沢山つまっており、邦訳コミックの量も豊富だからです。
 

1:屈折
 X−MEN世界を語る上で、一番に挙げるべき要素はこの屈折でしょう。
 ヘンな宇宙人からヘンなパワーを授かって、ヘンなコスチュームを着て怪力で、無敵で不死身で悩みレスでYES!というのが日本人が持っている典型的なアメコミヒーロー像。
 改造された苦しみにあえぐ仮面ライダー、人間関係のうまくゆかないエヴァのシンジ君など、ヒーロー(コミックやアニメの主人公)に対して屈折を求める日本人には、この典型的アメコミヒーロー像というのは受け入れ難いものです。

 ですが、X−MEN世界には大小様々な屈折がテンコ盛りです。例えば、リーダーであるサイクロップスの屈折は目からビームが出ること
 字面にすると凄い屈折ですが、目を開くと勝手にビームが出てしまい、制御不可能であるとなれば笑ってばかりもいられません。バイザーは必要不可欠、それが無ければ同素材で出来たサングラスと、結局、目になにがしかの覆いをつけないといけない訳で、これは苦痛なばかりか初対面の人に要らぬ誤解を招きそうです。
 こんな能力を持つ上、おまけに両親とも生き別れているのですからかける言葉も見つかりません。

 カプコンゲームには全作出演、常に最強疑惑、無限コンボ疑惑の絶えない人気メンバー、ウルヴァリンの屈折は過去が無いこと
 彼は超人兵士計画ウェポンX計画の犠牲となり、全身の骨格に超金属アダマンチウムを移植されました。これに生来の超回復能力を加え、無敵の白兵能力を得るに至ったのですが、この時の記憶操作により、過去を失ってしまいました。
 これだけならまだしも、セイバートゥースと親子とか、色々な偽の記憶さえも植え付けられている為、もう何が何だか分かりません

 女性メンバーでは人気NO1との噂もあるローグの屈折は人に素肌で触れられないこと
 彼女の能力は直に触れた相手の記憶と能力をコピーしてしまう事で、犠牲者は昏倒してしまいます。彼女の代名詞である怪力と飛行能力も、とある人からのコピー。おかげでコスチュームは顔以外に露出の無いボディスーツ、水着まで似たようなものを身に付けないといけません。
 CD−Rを箱買いする様なコンピュータ系のオタクの人からはコピーさまさまじゃん!という意見が出そうですが、キスした恋人のいらん秘密を知ってしまったりするという実害もあり、喜んでばかりもいられません。
 

2:悲劇
 屈折と共に我々日本人が好むのは悲劇です。
 様々なメロドラマや泣ける話が好まれる他、大河RPGのシナリオには必ずと言っていいほど、人死にを始めとする泣かせの要素が入る所からもそれは明らかです。X−MENの悲劇の最たるものは世界
 X−MENの世界では、目からビームが出たり背中に羽根が生えてたり念力が使えたりする人達の事をミュータントと呼ぶのですが、世界は異能力者への嫌悪から彼らミュータントを差別し、排斥しようとします。具体的には物を投げられたりリンチされたり殺されたりするので、ミュータント達にとっては世界はであるといえます。

 さて、X−MENの面々もミュータント、彼らが阻止するのは、こうした迫害から悪の道に走ったミュータント達の犯罪なのですが、世界からするとX−MENもぐれたミュータントも同じように単なるミュータント。つまり、X−MENは正義の為に戦ってるから迫害の対象から外しますなんてことは無い訳で、彼らは自分達を差別する者達の為に命をかけて戦っている訳です。そして、こうした状況からミュータントと人間の平和共存を諦めてしまったのがゲームでお馴染み、磁界の帝王マグニートー様。

 彼の悲劇は方法論の違い
 ナチのホロコーストを体験し、今またミュータントへのホロコーストが現実のものとなる前に、彼はミュータントの為の聖域を築こうとします。
 しかし、彼の行動は超大国を刺激してしまい、結局聖域は墜ちてしまいます。

 世界がミュータントを受け入れないのなら住み分けてしまえ、というのが彼の方法論なのですが、その遂行における強引さからか、彼の主張はなかなか理解されません。
 他にも「他人と体が入れ替わってしまい、人格が混ざってしまったサイロック他人の生命を吸い取らないと生きて行けないオメガレッド心の傷が悪化、息子とも不仲のセイバートゥース愛した女はチームメイトの妻、報われぬ愛を捧げるウルヴァリン故郷は時間軸の彼方、その強大な力ゆえ色々な勢力から狙われるXマンなど、X−MENの世界には大小様々な悲劇がテンコ盛りです。
 

3:超能力
 バビル2世超人ロックジョジョの奇妙な冒険(3部以降)等など、大小様々な形で超能力が出てくる漫画は枚挙に暇がありません。
 X−MEN世界には様々な超能力が出てきます。
 
 伝統的な念力やテレポートの他、目からビームが出る背中に羽根が生えている天候を操れる磁力と重力を操れる他人の能力とシンクロ、これを行使できる熱エネルギー場で体を包んで飛行できる超スピードで動ける体に受けた運動エネルギーの分だけ強くなれる超音波の叫びを発することができる皮膚が伸びて、これを自在に操れるなどの異能力、怪能力がテンコ盛り。
 そこらの超能力漫画2〜3作分の超能力を満喫できます。
 

 さて、このX−MEN世界に踏み込むのに最適なのはX−MENアンコール 1。邦訳エピソードの中でかなり出来の良い磁界の帝王マグニートー編と超人兵士オメガレッド編が一度に読める優れものです。
 特にウルヴァリン、マグニートー、セイバートゥース、オメガレッド、サイクロップスなどのゲーム登場キャラの活躍が見られるので、カプコン製格闘ゲームで興味をそそられた、ゲームからのエントリー組にお勧めです。

 こうしてアメコミ世界に踏み込んだ訳なのですが、そもそも外国の漫画を日本で読もうとしている訳なのですから、色々な困難が待ち受けています。
 読みたいエピソードが翻訳されないでも、アメコミショップが近くにないアメコミショップに行っても、欲しいエピソードがなかったもう、個人輸入しかないのか…ですが、この困難のおかげで、適度な飢餓感が常に持続するのです。

 この飢餓感を持ったアメコミファンがコミケなどの旅行先でアメコミショップを見つけたときの喜び、読みたくてたまらなかったエピソードが邦訳されるときの喜び、古本屋の片隅で偶然にアメコミを見つけた喜びはそれはもう言語に絶するものがあります。
 そう、アメコミファンをやる最大のキーワードは、この適度な飢餓感にあるのです。
 物理的な隔絶による隔絶のおかげで、対象に対して常に謎と神秘が持続するのです。
 例えるなら、永遠に謎の解けないゼビウス、永遠に隠しキャラが出続ける鉄拳、永遠に新テクニックが発見され続けるVFシリーズとでもいった所でしょうか。
 アメコミ、それは現代日本オタクに残された最後の未踏峰といえるのではないでしょうか。

 うおおお!キャプテンアメリカシリーズ邦訳希望ゥ!

 筋肉!毛!歯!舌!牙!

 もっと、もっとアメコミを我に!
 


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